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|気候変動合意|「評価できるが完璧ではない」―太平洋の女性たち

 

【キャンベラIPS=キャサリン・ウィルソン】

太平洋島嶼諸国の女性たちは、パリで行われた国連気候変動条約第21回締約国会議(COP21)でなされた地球温暖化を抑制するための合意について、途上国と先進国との間の対立によってこれまで特徴づけられてきた問題で世界が連帯した前例なき瞬間であったと歓迎している。しかし、気候変動を自身の生存にとって最大の脅威とみなしている太平洋の小さな島嶼途上国にとっては、威勢のいい言葉に実際の行動が伴なわなければ、成功とは言えない。

「これは大きな前進で、太平洋島嶼諸国の先住民らが一致して行動や正義を要求しなければ、不可能だったと思います。私は将来に関して楽観視しています。」と語るのはキャシー・ジェトニル=キジナー氏だ。キジナー氏は、マーシャル諸島出身の気候問題に関する活動家・詩人で、この歴史的な会合にも出席した。

昨年12月にパリで開催された21回目の会議では、気候変動条約の締約国会議を構成する195か国プラス欧州連合(EU)の利害の間で集中的な協議と妥協が図られた。

太平洋諸島フォーラム事務局(PIFS)のメグ・テイラー事務局長は、「太平洋島嶼諸国が指摘したすべての問題が最終成果・文書に反映されたわけではありませんでしたが、気温上昇幅の1.5度までの抑制、個別要素としての損失・損害の問題、簡素化された気候変動対策資金への大規模なアクセスといった取り組みを追求する重要性が認識され、相当の進展がありました。」と語った。

中部太平洋にある小さな環礁国キリバス(人口11万人)の「キリバス気候アクションネットワーク」のクレア・アンテレア氏は、会議の成果は「評価できるが完璧ではない」と指摘したうえで、新たな気温抑制目標と気候対策資金拡大が特に重要だと語った。

世界気象機関(WMO)は、2016年の世界の平均気温は産業化以前の時代より1度上昇して、史上最も暑い年になると予想している。他方、太平洋島嶼諸国は、今世紀に起こりうるさらなる気温状況、海面上昇、海洋の酸化、サンゴの白化に備えている。多くの島嶼国家における最大海面上昇幅は0.6メートル以上になる可能性があると、「太平洋気候変動科学プログラム」は報告している。

マーシャル諸島では、海面上昇のために「ただの高波でも洪水を引きおこし、セメントや石で造られた防波堤を壊し、家々を完全に破壊します。また、海水の侵入によって運ばれた塩分は作物や食物をダメにするのです。」とジェトニル=キジナー氏は語った。

もっともうまくいった場合でも、キリバスやパプアニューギニアでは気温上昇が1.5度に達する可能性があるが、もっとも温室効果ガスの排出が多い場合、2090年までに2.9度も上昇するかもしれない。

地球温暖化が進めば、パプアニューギニアやソロモン諸島では常食であるサツマイモの生産高が2050年までに5割以上減少する可能性があるとアジア開発銀行では予測している。作物減少の重荷は、地域で作物を育て水を運んでくることに主たる責任を負う太平洋島嶼諸国の女性たちの肩にかかってくるだろう。

太平洋島嶼諸国は、昨年COP21に際して新たな気温上昇の上限1.5度への認知度を高めようとキャンペーンを張った。これは、島々が食物や水、土地の損失のためにますます住みにくい場所になっていく中で、将来の気候変動がもたらす衝撃を和らげ、強制的な移住を減らすためにきわめて重要だと彼らは論じている。

そして、先進国社会における見方の変化を示す兆候として、COP21第2週の間に出てきた「野心連合(Coalition of High Ambition)」において数多くの途上国・先進国がこの問題に関するキャンペーンで太平洋島嶼諸国に加わった。とりわけ、この連帯はメキシコ・ブラジル・ノルウェー・ドイツ・EU・米国等79か国によって示された。

地球の気温上昇を2度に抑制し、さらに0.5度の減少を「追求する努力をする」ことをめざした最終的なパリ協定は、この連合にとっての勝利といえよう。

「『1.5度』は会議開始前には交渉のテーブルにも上ってもいませんでした。だから、それが最終テキストに入ったと聞いた時、安心感で叫んでしまったほどです。とはいえ、文言があいまいな点は心配で、実際に1.5度を達成するには私たちが継続的に圧力をかけ

る必要があります」とジェトニル=キジナー氏は語った。

しかし、太平洋島嶼諸国にとて、異常気象に対処するうえで既に直面している大きな諸問題がこれでなくなるわけではない。小規模な島嶼経済にとって、国際的な気候財源へのアクセスなしに、こうした諸問題への対応は不可能である。今年、島嶼諸国の指導者らは、途上国による気候問題への対応資金として2020年までに毎年1000億ドルを拠出するという公約を国際社会が守るように呼びかけている。この目標は2009年にコペンハーゲンで初めて設定されたものだ。これまでに拠出された金額に関する評価は分かれているが、世界銀行は4月、700億ドルという巨額の不足が生じているとしている。

テイラー氏は、「パリ協定第9条は、島嶼途上国にとって、資金提供は公的かつ無償でなければならないと定めており、2020年以後の気候財源には前向きな面がみられます。」と語った。「グリーン気候ファンド」(GCF)のような財源メカニズムについては、無償供与とすべきか低利子の融資とすべきかについて従来から議論がなされている。

アンテレア氏は、資金が効果的なものであるには、「簡潔な提供方法を通じて草の根の人びとに届くようなものである必要がある」と強調した。

PIFSのテイラー事務局長は、「最終協定で極端な気候と自然災害によって引き起こされる損失・損害が言及されたことは、気候変動の被害を受けている国々が重大な環境汚染を引き起こしている国々に対して責任や補償を訴えるための内容が入っていないにせよ、画期的な一歩となりました。」と指摘したうえで、「しかし、この決定によって、その他の方法を使って他の加盟国の責任を問う国家の法的権利が、減じられたわけではありません。」と語った。

しかし、大きな希望となっているのは、排出削減目標を設定し、長期的な監視・再検討のプロセスにこれを付すという法的拘束力のある公約を各国がなした点にある。これにより、再生可能エネルギーへの世界的移行は加速され、地球温暖化ガスの最大の発生源である化石燃料の燃焼はますます困難になるであろう。

「私たちの目標に対して諸政府に責任を取らせるための重要なステップとして、5年ごとの再検討が必要です。」とジェトニル=キジナー氏は強調した。もし各国がこの目標をより良いものにする努力を怠ったならば、地球は、2.7度以上の破滅的な気温状況に向かうことになるかもしれない、と専門家らは結論づけている。

パリでの世界的な合意が示した高揚感が去ったのちに最も緊急となってくる問題は、この高邁な約束をいかに実行に移すのか、という点である。太平洋島嶼諸国の人びとの生活は、まさにその点にかっているである。(1.1.2016) IPS Japan/ IDN InDepthNews