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移住労働者に「グローバルな見方」を学ぶシンガポールの学生

【シンガポールIDN=カリンガ・セネビラトネ】

政府統計によると、この東南アジアの豊かな国(=シンガポール)においては、人口の3人に1人が移民である。彼らは、近代的なインフラを築き、ビルを清掃し、レストランで料理や給仕をし、勤め先の家庭で子どもや老人の世話をしているが、しばしば賃金レベルはきわめて低く、粗雑な扱いを受け、地元の人々からは不審の目で見られている。

数百人のインド人労働者が警察車両を襲った2013年の「リトルインディア」暴動に始まり、イスラム系テロ集団との関連が疑われる27人のバングラデシュ労働者の最近の逮捕に到るまで、移住労働者に関しては社会に緊張が走っている。法律を学ぶある学生が語ったように、「私たちは移住労働者に関して二次的な情報源からしか情報を得ていない。そしてそれは、彼らがどういう人たちであるかについて教えてはくれない。」のである。

このことは、「地元民」に対する「移住労働者」の比率が世界で最も高い国の一つであり、移住労働者の大半が近隣諸国から来ているシンガポールに特有の現象ではないが、同国の外国人労働者に対する劣悪な処遇は、地域の外交に悪影響を及ぼす可能性がある。

1月31日から1週間の日程で始まった「移住労働者問題啓発週間」(MWAW)は、シンガポール国立大学(NUS)が2014年に始めた取り組みであり、今年からはイエール大学・NUSジョイントベンチャー大学も加わっている。

この取り組みは、法学生を移住労働者やそれを支援する非政府組織(NGO)と交流させることによって、移住労働者の希望や、シンガポールに出稼ぎにきた動機について直接学ぶ機会を与え、学生らの視野を広げてもらおうというものだ。移住労働をめぐる法的、社会的、政治的問題に対する法学生の感覚を養わせるために法科大学が行っている取り組みである。

5日間のイベントで、2つのエリート大学の学生ら400人が、NGOや130人の外国人労働者と交流した。イベントは、1月31日、バングラデシュ人労働者の孤独を詠ったベンガル語の詩の朗読から始まり、2月5日の夜、暗い場所で学生と移住労働者が話し合う「トーク・イン・ザ・ダーク」まで続いた。その合間には、法と移住労働者、家事手伝い労働者をめぐる社会的問題、人身売買された性労働者をめぐるパネル討論もあった。

「本校の学生の多くは裕福な中流家庭の出身です。従って、私たちは特権的な場所にいて、移住労働者の権利といった特定の問題を見過ごしているのかもしれません。」と、NUS法科大学校のイベント実行委副委員長のビクター・デイビッド・ラウ氏は語った。

「本校の学生の多くは、家庭で家事手伝いを雇っているかもしれません。こうした人々は他国の市民であり、尊重される必要があります。」

ラウ氏は、「法学生らの考え方が一朝にして変わるものではなく、時間がかかるかもしれませんが、大学による教室を飛び出した今回の教育戦略は、移住労働者らが直面している苦境や、外国に出稼ぎに出る決意をした彼ら・彼女らの希望や志を顧みないメディアから得られた二次的な情報を通じて、移住労働者に対するステレオタイプ的な見方を形成している学生の問題に対処することを狙ったものです。」と語った。

学生らは、パネル討論や移住労働者らとの暗闇での会合に加え、外国人労働者の寮を訪問し、性労働者の実態をみるためにゲイラン地区の「赤線地帯」を回った。

NUSの法学部長であるサイモン・チェスターマン教授は、1週間に亘る教育プログラムの開始にあたって、「シンガポールの繁栄の裏には移住労働者の権利問題という『暗部』があります。本校の学生には、移住労働者が慢性的な問題に対処できるよう、無償で手を差し伸べるよう奨励したい。私はチャンギ国際空港で、外国人労働者らが法的な問題が解決しないまま本国に送還される様子を見てきました。」と語った。

「移住労働者:人間かプロジェクトか?」というタイトルで開かれたMWAWの開会パネル討論では、外国人労働者への法的保護の強化の必要性に関する議論がなされた。討論の司会者である上級法律講師のシーラ・ヘイン教授は、「初めてシンガポールにきたとき、この国の法学生は、いい点数を取ってカネを稼ぐことにしか興味がないから気をつけるようにと言われました。」「しかし、(実際には)多くの学生が社会問題への意識を持っています。多くの移住労働者が私たちのもとを訪れ、不公正な扱いについて訴えてきます。」と語った。

ヘイン教授は、学生らが社会への意識を持てば、移住労働者やNGO、地域社会、政府関係者、メディアとの協力やネットワーキングにおいて成果を上げることができると考えている。

家事労働者のためのNGO「ホーム」(HOME)のジョロバン・ワム常任理事は、人口400万人のシンガポールには22万7000人の外国人家事労働者がいると指摘し、「無償の家事労働をよしとする歴史的風潮があり、家事労働者の権利はないがしろにされがちです。」と語った。

「家事労働者については人権も労働権も顧みられず、雇主と労働者の関係は忠誠と信頼を基盤としたものになっています。家事労働者を家族の一員として扱うことによって、彼女は『雇われ人』ではないとの意識が強まってしまい、労働時間の制限や休暇の権利、労組加入権などは与えられないことになるのです。」

ワム氏は、「家事労働者も労働法によって保護されるべきです。」と語った。しかし、他のパネリストである人材省労働力政策・戦略局のタン・ファン・クン副局長はこれに賛同せず、最近人材省が外国人労働者に対して行った調査で、シンガポールでの労働環境に不満を持っている外国人労働者は10人に1人に過ぎなかったという調査結果を挙げ、「家事労働は法的枠組みに収めることがきわめて困難です。」と語った。

移住労働者による相談を毎年多数扱っているNGO「移動労働者カウントツー」のアレックス・オー氏は、学生や学者に対する熱のこもった発言でこれに反論し、「外国人労働者の搾取の問題をなきものとする前に、シンガポール経済の構造が理解されなくてはなりません。」「この国では、移住労働者は使い捨てにされています。シンガポールでは、人権や労働者の権利よりも企業の権利が優先させているのです。」と嘆いた。

ワム氏もオー氏も、移住労働者が搾取される最大の領域のひとつは、労働者の手配師によるものだと指摘した。

2014年12月現在、シンガポールには130万人以上の移住労働者がいる。このうち73%は、「非熟練」あるいは「低技能」の労働ビザ保有者であり、月にたかだか400~600ドルの仕事を世話してもらう見返りに3000~1万ドルを手配師に払って入国しているのである。

このカテゴリーに入る労働者のほとんどが、フィリピン、バングラデシュ、ミャンマー、インド、インドネシア、ネパール、中国の出身者で、[手配師への]支払いは書面上記録されていない。したがって、シンガポールでそうした支払いが違法化されていても、人材省はそれを止めることができないのである。

ワム氏もオー氏も、法律家の卵たちがこうした問題を認識していれば、この現代の災難に対する法的救済策を見つけることができるかもしれないと考えている。オー氏は、「すべてのNGOが、関心のある人々に対して、私たちの活動に参加できる数多くの機会を設けています。時には学生を一度に100人単位で動員して調査を行い、地域に出かけて労働者と話をし、適切な給与を得ているか調べています。」と語った。

ワム氏は、「HOMEにはフルタイムスタッフが6人しかおらず、意識喚起を行動に結びつけることができていません。」と語った。この点に関してワム氏は、とりわけ法学生に対して、期待をにじませた。

「(法学生の皆さんには)国会議員に会って移住労働者の権利について議論していただきたい。国会議員に、シンガポール国民がグローバルな問題について、移住労働者の権利について関心を持っていることを知らしめてほしいのです。」とワム氏は語った。

法学生のラウ氏は、「NGOは、セミナーの開催を通じて、学問にばかり目を向けがちな学生らに働きかけようとしているのです。学生はこうした問題を授業の課題扱いするだけではなく、自分自身の活動の中に取り込む必要があります。教育とは単に勉強することではなく、社会的な効果を生み出すことです。こうした社会的なものの見方を活動に持ち込むことができれば、素晴らしいと思います。」と語った。(2.06.2016) IPS Japan/ IDN InDepth News