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母語の軽視は世界市民への脅威

【パリIDN=ジャヤ・ラマチャンドラン】

国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)国際教育到達度評価学会(IEA)と協定を結んで、世界市民と持続可能な開発に関する教育の測定を行うことになったが、他方で、母語を軽視する傾向が世界的に続いており、国連の「持続可能な開発目標」第4目標達成の妨げになっている。

2030アジェンダ」は「第4目標」の中に、「すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進すること」を目的とした7つのターゲットを含んでいる。

その7つ目のターゲット(目標4.7)は、次の15年のうちに「とりわけ、持続可能な開発、持続可能なライフスタイル、人権、ジェンダー平等、平和と非暴力の文化の促進、世界市民、文化的多様性の承認、持続可能な開発に対する文化の貢献の認識に関する教育を通じたものを含めて、持続可能な開発を促進するために必要な知識とスキルをすべての学習者が習得できるようにすること」を国際社会に義務づけている。

ユネスコは、学習者がグローバルな問題に対峙し解決していく行動的な役割を担い、より平和で、寛容で、包摂的で、安全な世界の実現に向けた積極的な貢献を行えるようエンパワーしていくことを、世界市民概念と結び付けている。

しかし、目標4.7が達成できる可能性は、適切な措置が緊急に取られないかぎり、かなり低いと言わざるを得ない。毎年2月21日に設定されている「国際母語デー」の機会にユネスコが発表している重要なデータから、その理由を見て取ることができる。

ユネスコ「グローバル教育モニタリングレポート」(GEMレポート)の最新版によれば、中国・インド・米国の人口の合計に匹敵する世界の人口の4割が、自ら理解できる言語での教育を受けることができていないという。

ユネスコはまた、「世界で話されている約7000言語のうち5割以上が数世代の内に消滅し、6720言語が世界の人口のわずか4%(2億9600万人、インドネシアの人口に匹敵)によってしか使われていない。」「わずか数百の言語だけが教育制度と公共空間の中で位置づけを与えられ、デジタル空間では100以下の言語が使われるのみである」と指摘している。

「もし理解できないなら、どうやって学ぶのか?」と題されたGEMレポートは、自ら理解できる言語以外のもので教えられた場合、とりわけ貧困家庭の子どもの学びに悪影響を与える可能性があると論じている。

ユネスコのイリナ・ボコヴァ事務局長は、「国際母語デー」を記念して、子供たちが自分で話せる言語で学ぶという基本原則を強調したうえで、「すべての人々にとっての、質が高く、公正で、生涯にわたる学習を優先するグローバルな新教育方針においては、教育と学習、さらには言語の多様性を促進するうえで、母語の使用を完全に尊重するよう奨励することが重要です。包摂的な言語教育政策は、高等教育における達成度を高めるのみならず、寛容さ社会の結束、そして究極的には平和に貢献するものとなるでしょう。」と語った。

GEMレポートは、二ヶ国語(=バイリンガル)教育に投資している国々で学力が向上している、と指摘している。グアテマラでは、バイリンガル教育を実施している学校の生徒らは、留年・退学率が相対的に低く、全ての教科において成績もよかった。また、8年にわたってバイリンガルプログラムに参加しているエチオピアの子どもたちは、カリキュラム全般にわたって学力を向上させていた。

この報告書によれば、植民地化された歴史を持つ国々は、(旧宗主国の言語と地元の言語)二ヶ国語教育への移行を複雑なプロセスとみなす傾向があるという。例えば、ポルトガル語やスペイン語を使い続けている多くのラテンアメリカの文脈や、フランス語が依然として支配的な教授言語である多くのフランス語圏アフリカ諸国の場合がそうだ。

GEMレポートの「教育に関する世界不平等データベース」(WIDE)は、この傾向は生徒の学習機会を著しく妨げていることを明らかにしている。

たとえばコートジボワールでは2008年、試験で使う言語を家庭でも使う5年生の55%が読みの基礎を習得しているのに対して、別の言語を家庭で使っている生徒の場合はわずか25%であった。

イランでは、家庭でペルシャ語を話さない4年生の8割が読みの基礎を習得しているのに対して、話す場合は95%以上に達している。

ホンジュラスでは2011年、授業で使うのと同じ言語を家庭でも使う6年生の94%が読みの基礎を習得したのに対して、使わない場合は62%であった。

トルコでは2012年、トルコ語をほとんど話せない15歳の生徒の約5割しか読みの最低基準に達しなかったのに対して、全国平均は8割であった。

ユネスコ調査は、トルコやネパール、パキスタン、バングラデシュ、グアテマラのような多言語社会では、学校制度を通じて支配的な言語を押し付けることが―それは時として必要に駆られた選択ではあるが―より広範な社会的・文化的不平等につながる不満の元となっていることを明らかにしている。

GEMレポート作成の責任者であるアーロン・ベナボット氏は、「言語は諸刃の剣です。」と指摘したうえで、「言語によって民族集団の社会的紐帯や帰属感が強まることもありますが、周縁化の基礎をなすこともあります。教育政策は、マイノリティの言語使用者を含め、すべての学習者が、自分の知っている言語で教育を受けられるようにしなくてはなりません。」と語った。

調査は、子どもたちが自分の理解できる言語で教育を受けられるようにするための、いくつかの勧告を行っている。

1.早い時期に母語で習得した内容を維持できるように、少なくとも6年間は母語で授業を行うことが必要である。

2.教育政策が母語での学習の重要性を認識すること。40か国の教育政策を対象とした調査によると、とりわけ低学年において、家庭で使う言語で子どもたちを教えることの重要性が理解されているケースは半数以下であった。

3.教員が2つの言語で教え、第二言語学習者のニーズを理解できるように訓練する必要がある。教員は、包摂的な教材や適切な評価戦略を含め、バイリンガル教室の学習環境の現実にほとんど対応する用意がない。セネガルではわずか8%、マリではわずか2%の教員しか、地元言語で教えることに自信を示していない。

ユネスコのボコヴァ事務局長は、「多言語的アプローチにおける母語は、質の高い教育の不可欠の要素であり、それ自体、女性や男性、そしてそれらの社会をエンパワーするための基礎となるものです。」と強調した

「こうした観点から、『アジェンダ2030』履行に向けたロードマップであるユネスコ『教育2030行動枠組み』は、教育と学習における母語使用の完全なる尊重と、言語の多様性の促進・保護を奨励しています。」「多言語主義は、これらの目的を前進させるために不可欠です。つまり、成長や雇用、保健、持続可能な消費・生産、気候変動など、『アジェンダ2030』を横断して成功をもたらすために肝要なものなのです。」とボコヴァ事務局長は語った。

ボコヴァ事務局長はまた、「ユネスコは、インターネット上においても、関連する地域言語のコンテンツや、メディア・情報リテラシーへの支援を通じて、言語の多様性を充実させることに力を入れていきます。」と指摘するとともに、「ユネスコは、地域・先住民知識システム(LINKS)プログラムを通じて、広範な知恵の源である先住民族の文化・知識を保護し共有するチャンネルとして母語や地域言語の重要性に着目しています。」と語った。

国際母語デーは、言語と文化の多様性、多言語の使用、そしてあらゆる母語の尊重の推進を目的として1999年11月のユネスコ総会で創設され、2000年2月以来毎年実施されている。

1952年、パキスタンの2つの公用語のひとつとしてベンガル語を認めるようデモを行っていた学生が、現在はバングラデシュの首都であるダッカで警察によって射殺された日が、「国際母語デー」の由来となっている。(2.21.2016) IPS Japan/ IDN InDepth News